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I cannot live without books.

コンビニ人間/村田沙耶香

 コンビニ人間

 

※この記事はネタバレあります。

 

 

かっこいい小説でした。

 

概要ということで、アマゾンの紹介文を引用します。

 

36歳未婚女性、古倉恵子。大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。これまで彼氏なし。日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと突きつけられるが…。「普通」とは何か?現代の実存を軽やかに問う衝撃作。第155回芥川賞受賞。

 

 

 

「あの人、35歳とかでしたよね。それでコンビニアルバイトって、そもそも、終わってません?」 「人生終了だよな。だめだ、ありゃ。社会のお荷物だよ。人間はさー、仕事か、家庭か、どちらかで社会に所属するのが義務なんだよ」

 

同僚やコンビニ店長にこんな風に言われる白羽。

「仕事か、家庭か、どちらかで社会に所属するのが義務」というのは僕も耳が痛いのですが。(正社員として働いたことがない32歳なので)

辛辣です、世間は。

 

「威張り散らしてるけど、こんな小さな店の雇われ店長って、それ、負け組ですよね。底辺がいばってんじゃねえよ、糞野郎……」

 

という白羽のセリフ。

いやいやいやいや、自分の立場わかってるのでしょうか(いや、わかってない)。

おめえ1回コンビニの雇われ店長をやってみてから言えよって話です。

負け組じゃねえよ、精一杯がんばっているんだよ、社会の中で。

そりゃ確かに給料ガッポガッポで充足した生活で、という仕事じゃないかもしれないけど。

「35歳アルバイト」のおめえが毒づいてるんじゃねえよ。

 

って言いたいところです。

別に「35歳アルバイト」でも良いと思いますよ?

本人が納得していればね。

何を持って勝ち組・負け組って決めることはないでしょう。

ただ他人の苦労も知らないで批判ばかりしている野郎はその考え方自体が「負け組」だと僕は考えています。

 

「僕は確かに今は仕事をしていないけれど、ビジョンがある。起業すればすぐに女たちが僕に群がるようになる」

 

という白羽に対して、恵子のセリフがこちら。

 

「じゃあ、先にちゃんと白羽さんがそういう風になって、実際に群がってきた女性の中から選ぶのが筋なのではないですか?」

 

ごもっともwww

 

ぼくは一生何もしたくない。一生、死ぬまで、誰にも干渉されずにただ息をしていたい。それだけを望んでいるんだ

 

こんなことを平気で言う白羽はほんと救えないなと…。

 

それでもひょんな事から白羽と一緒に住むことになった恵子ですが、職場の同僚にバレてしまいます。

 

「ちょっとちょっと、何時の間にそういうことになってたのー!? お似合いなんだけど! ねえ、どっちから告白したの? 白羽さん?」

 

 

ていうか、付き合ってないんですけどね。

 

無職の白羽を自分の部屋に住まわせてやっているのに、バカ白羽は恵子にこんなこんな口をききます。

 

「それはね、あんたがおかしすぎたからですよ。36歳の独身のコンビニアルバイト店員、しかもたぶん処女、毎日やけにはりきって声を張り上げて、健康そうなのに就職しようとしている様子もない。あんたが異物で、気持ちが悪すぎたから、誰も言わなかっただけだ。陰では言われてたんですよ。それが、これからは直接言われるだけ」

  

それは本当のことなのかもしれないが、どの口が言っているんだとぶん殴りたくなります。

 

弟の妻曰く、実母にお金を払わせてブッチする無職の白羽。(お母さんがかわいそう)

 

この人、ルームシェアの家賃滞納したまま逃亡して。携帯も繋がらないみたいで、北海道の実家にまで電話がかかってきたんですよ。こっちからの電話も全部無視するし。たまたま私が同窓会で東京に来る予定があったんで、お義母さんが立て替えたルームシェアの滞納分全部支払って、頭下げて謝罪して。まったく、いつかこういうことになると思ってたんですよ。この人、自分で稼ぐ気が全然なくてお金に意地汚くて、だらしなくて。

 

さらに恵子に転職させて寄生を強めようとしていきます。

 

白羽さんは相変わらず浴槽で眠り、昼の間は部屋で食事をしたり求人広告を見たりと、自分が働いていたときよりよほど活き活きと動き回って生活しているようだった。

 

 

結局白羽の計画は恵子の信念によって潰されます。

 

「気が付いたんです。私は人間である以上にコンビニ店員なんです。人間としていびつでも、たとえ食べて行けなくてのたれ死んでも、そのことから逃れられないんです。私の細胞全部が、コンビニのために存在しているんです」

 

「いえ、誰に許されなくても、私はコンビニ店員なんです。人間の私には、ひょっとしたら白羽さんがいたほうが都合がよくて、家族や友人も安心して、納得するかもしれない。でもコンビニ店員という動物である私にとっては、あなたはまったく必要ないんです」

 

 

人間として、女としての自分はそこにはなく、自分はコンビニのために存在しているんだという信念の強さが感じられました。

親にも家族にも認められなくていいというのです。

結婚しなくても子供を作らなくても正社員にならなくても「コンビニで働く」ということが何よりも大事なのです。

この突き抜け感が恵子のかっこいいところです。

 

ぼくには真似できません。

ただそんな恵子のようにシンプルに生きられたらかっこいいし色んなことが楽になるだろうなとも思いました。

恵子もまた「ミニマリスト(最小限主義者)」なのかもしれません。

 

ぼくは今は32歳で契約社員みたいな働き方でいます。

これまで(大学卒業後)は役者やコールセンター業務、派遣、臨時的任用教員、ユニクロ店員、牛丼バイト等をやってきました。

職を転々としてきているんです。

なので白羽のことはあんまり悪く言えません。

「起業して人生大逆転させるんだ」という心意気も分かります。

 

しかし、今までの経験の中で恵子のように「人間である以上に◯◯なんです」と人生を賭けて取り組めるのって「教員」かなと。

四六時中、休日も、勤務時間外も仕事のことを考えて取り組んでいけるものとしたらやっぱり教員なのではないかと僕の場合は思うのです。

 

あ、いや。

やっぱり人間であることが前提です(^_^;)

結婚もしたいですし、子供なんかできたら溺愛しちゃうと思いますもん。

ただ教員になってクラスの担任にでもなれば、やはり四六時中生徒のことを考えてしまいます。

 

 

 

「普通」とは何なのか。

結局誰もが普通なんてことはなく、どこかが変であったり異常であったり異色であったり特殊であるのかもしれません。

僕はここまで随分特殊な人生を歩んできてしまいました。

「普通」を目指して教員になったとしてもどこか特殊さは残ってしまいそうな気もします。

 

「自分はなんでこんな生き方になってしまったのだろう」と考える人たちにグサグサ刺してくる痛快な作品になっているのではないでしょうか。

未読の方、ぜひ読んでみてください。

 

 

 

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